手に取るべからずと戒めている禁断の果実なのに,その果肉は今食さなければ,誰かに食べられてしまう前に食べなければ,一生食べられなくなるかもしれない。ナップスターにとっての禁断の果実,BMGにとっての禁断の果実,ユーザーにとっての禁断の果実。ナップスターの周りには,今,芳しい香が渦巻いている。
ナップスター社は31日,法廷闘争を繰り広げているBMGエンタテインメント社の親会社,ベルテルスマン社とパートナーシップを結んだ。ベルテルスマン社は,同社が著作権を持つ楽曲のファイル交換が可能な,有料加入サービスを開始することができたら,訴訟を取り下げるとしている。また,ベルテルスマン社傘下のオンラインCDストア「CDナウ」へのリンクを求めている。だが,ユーザーは,CDナウで音楽情報を入手し,ナップスターで無料で楽曲をダウンロードしている,という報告も出ている。
ナップスターとBMGの提携,という報じられ方だが,内実はよくわからない。無料のファイル交換は維持するというナップスターCEO,ハンク・バリーの話もあり。BMGの楽曲に限って,著作権保護された会員限定の配信を行うシステムを作るという話もあり。結局は経営不振を脱しきれないCDナウの有効利用の起爆剤として,ナップスターを利用するという話もあり。ナップスターのプロトコルにどのような変更が加えられるのか,そしてソフトウェアになんの機能がつくのか,が,みえない状態だ。まっ,妥当な会員サービスをつくれれば,ナップスター社は,きちんとお金を流通させられる企業として,はじめて両足で立つことができる。果たして,ファニングがナップスターのコードをどのように書き換えるのか。それによって,ナップスターの今後もみえてくる。
とりあえず,ワーナーやソニーやEMIなどに先駆けて,「禁断の果実」にいち早く手を出したBMGは,不安の中でもしてやったりの気分かもしれない。なにより,ファイル共有による音楽配布というカタチは,将来,生き残るための熟れた果肉だ。いつまでも未来を先送りしているよりは,飛び込んでしまったほうが楽だし,自分だけが生き残れることになるかもしれない。…さて,あとはユーザーだけだ。もし,月4ドル95セントでナップスターを使い続けられるとしたら,あなたは,それを払うだろうか?
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